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【レポート】『社会事業家100人インタビュー』 株式会社K2インターナショナルジャパン 岩本真実 氏

2014.04.02

『社会事業家100人インタビュー』第25回
先輩社会事業家のビジネスモデルを学ぶ
2014年3月4日(火)17時~19時
於: 250 Nikomaru Honey Cafe Boom Boom(ニコマル ハニーカフェ ブンブン)

ゲスト:(株)K2インターナショナルジャパン 岩本真実さん

 

 
<プロフィール>

1971年神奈川県生まれ。野村證券株式会社OL時代、コロンブスアカデミーにてボランティアを開始。1997年より海外で不登校児と共同生活を送りながら、就労支援のためのレストラン、ブックショップ等計4店舗の立ち上げに携わる。2005年に帰国し、現在は、湘南若者サポートステーション統括コーディネーター、にこまる食堂プロジェクトリーダーとして、若者の自立・就労支援の第一線で活躍。2013年からは(特)ヒューマンフェローシップの代表理事も務める。社会起業家のためのビジネスプランコンテストSTYLE 優秀賞受賞(2007年)、日経ウーマンのウーマンオブザイヤー「リーダー部門第9 位」(2008年)受賞。

 

<今回のインタビューのポイント>(インタビュアー IIHOE川北)

課題を抱えた若者の就労支援は、「どう寄り添うか」だけでなく、「どう効果的に就労を継続できる力を育てることができるか」も重要。飲食店という、競争の厳しいサービス業の営業の現場と、共同生活できる環境を持つとともに、ボランティアなど、職場の上下関係以外に相談や会話できる存在までそろえていることで、それぞれに課題を抱えた多様な若者が多数、継続的な支援を有効に受けることができている。それが可能になった経過を、ぜひ、学び取ってほしい。


若者就労支援は自立生活支援から始まる

引きこもりやニートなど、さまざまな課題をもつ若者が就労できるようになるためには、まず、本人が自立して、安定した毎日を送れるようになることが必要です。食や睡眠など生活の基礎が崩れ、自己管理ができていない若者は、親元から離れて当事者と共同で寮生活をすると、生活のリズムが整い、時間管理ができるようになってきます。生活圏をともにすることで、対人関係も少しずつ改善していくのです。そこで、K2インターナショナルグループ(以下K2)では、さまざまなタイプの共同生活寮や自立支援ホームを設置・運営し、すべての活動の基盤として位置付けています。


お皿洗いで、適性がわかる

K2全体の事業規模は約5億円。自主事業と、国や自治体からの委託金・助成金が半々です。JR根岸駅周辺に、タイプが異なる就労の場を複数設けており、それらの資源を活用して、1人1人の状況に応じた段階的な支援プログラムを組み、専門家を含むチーム体制でサポートしていきます。

飲食店を軸としている理由は、(企画や仕入れ、下ごしらえ・掃除などの裏方や接客など)いろいろな仕事の基礎を含んでいて、1人1人にあったプログラムが組みやすいからです。お皿洗いをさせてみるだけでも、その子の適性はだいたいわかるものです。また、たとえ研修であっても、直接お客さんの入りや反応をみて、自分がどのように役に立っているのか実感できるため、最初から実際の経済の場に入ってもらうことは、とても大切だと考えています。

他県から(最近は韓国からも)視察に来ていただく機会が増えましたが、これから若者就労支援を始めたいという方には、「自主事業として、まず食堂をやってみませんか?」とお勧めしたいです。


多様な就労の場をつくって活用する

JR根岸駅前に2010年にオープンした「にこまる食堂」は、年会費1000円を払って“サポーター”になると、1食250円で食事ができます。基本は自主運営ですが、地域の家庭菜園などからの食材提供、ボランティア、寄付を募っています。利用者の朝夕の食事の場でもあり、閉鎖的になりがちな若者就労支援活動を、地域の人たちに自然なかたちで知ってもらう場にもなっています。

開墾から手掛けた「にこまるソーシャルファーム」は、利用者の研修プログラムでの活用や食材調達目的だけでなく、畑管理で利用者の親御さんと連携したり、食堂の生ゴミをたい肥として活用したりするなど、副次的効果も生んでいます。

(今回のインタビューの会場ともなった)「250 Nikomaru Honey Cafe Boom Boom(ニコマル ハニーカフェ ブンブン)」は、2013年のオープン。K2本社ビルの屋上で飼育されているミツバチからハチミツを採取し、そのハチミツを使ったカフェメニューを展開中です。今夏から、近くの横浜プールセンター売店で、レモネードの販売も予定しています。

カフェ店頭では、「ねぎしの森のハチミツ」だけでなく、オーガニックのはちみつを原料とした輸入商品なども販売している。

お好み焼ころんぶす」は、根岸本店のほか、港南台駅前店(2001年オープン)、石川町駅前店(2008年オープン)があります。歴代の店長は元利用者。独立してお好み焼き屋を始めた人もいます。K2がてがける中では一番ハイレベルで、地域の一番店を目指しています。

大阪風のお好み焼きの他、もんじゃ焼き、広島焼き、チヂミなど多彩なメニューを展開。被災地支援の一環として、石巻の食材を使った料理もある。

 

ニーズの変化に合わせて、支援のスタイルを展開する

利用者は9割方男性ですが、女性ももちろん受け入れています。昔は、口コミや新聞の取材記事によって利用者が集まりましたが、現在は、受託している国や自治体の事業経由が一番多いです。インターネット検索も増えてきているため、ウェブサイトのリニューアルを考えているところです。また、なるべく若いうちからの切れ目のない支援が大切という観点から、県内7~8つの高校へのアウトリーチをもともと手掛けており、K2がキャリア教育の授業を担当している高校もあります。

20年前は、10代の登校拒否・家庭内暴力などの問題を抱えた子どもが主な利用者で、「一時的につまずいている状態」からの復帰の足掛かりとして、学校以外の活躍の場を提供すれば大丈夫だったのです。国内外での支援プログラムは、その子の将来への希望(進学や資格取得、就職など)へのステップのひとつという位置付けでした。

しかし10年前くらいからは、複数の課題を抱えた20~30代の若者が増加してきました。彼らは、停滞している期間が長いために、主体的に将来への道筋が描けないことが多く、K2は、継続的な就労の場(と形態)を自前で増やしていく必要にせまられました。取材などで、「手広く展開しているんですね」と言っていただくことがありますが、決して最初から多角化しようと計画してきた訳ではありません。

結果的に、K2のスタッフは、マネジャークラスも含め、元利用者が6~7割を占めるようになりました。正社員として働きながらメンタル面での治療を継続する人など、並行支援が必要な人もいますが、新しい利用者を迎えたとき、過去の自分の立場にたって考え、先輩として、適切なサポートを提供できます。また、共同生活が長いので、強い信頼関係を築けているのも強みでしょう。

東日本大震災で、元スタッフの被災がきっかけとなり、被災地支援事業もスタート。石巻食材を使ってつくったお弁当を、横浜市役所や複数の区役所で販売しています。石巻に拠点を設けて活動中ですが、利用者が支援する側に立つと元気になることを、ここでも強く実感しました。

 

事業の周辺に、新しい事業を生み育てる

地域で雇用の場を継続していくにともない、事業の周辺にも事業が生まれてきます。元利用者やスタッフが結婚して子どもができて、「子育て支援の場がほしい」という要望が出てきたことと、元利用者の若者にとっての働く場としても可能性があると考え、子育て支援拠点と24時間対応の「ぽにょぽにょ学童クラブ」ができました。地域で学童が閉鎖されていく現状を知り、逆に、これは参入のチャンスがある!と考えました。子どもを通じて、その家族に若者就労支援を理解してもらう場にもなっています。

横浜市立みなと総合高校の学食「アロハキッチン」の運営も行っています。高校との連携の中で、学食の運営する業者さんが定着しないという現状を知り、若者の就労支援の場として活用することを条件に受託しました。お好み焼き屋のセントラルキッチンとしても機能しており、対人関係が苦手な利用者は、ここではお客さんの目を気にすることなく働くことができます。

 

地域から愛され、信頼される存在になるために

飲食店などの事業を通じて、日常的に地域の人たちと触れ合う場はあるものの、K2がこの地でより存在感を増していくためには、別のアプローチを考える必要があるかもしれません。「ねぎしの森のハチミツ」は、そのツールとして大きな可能性を秘めていると感じます。さらに、地域の人に注目・理解してもらえるようなメディアへの出方や、地域への貢献度を数字で示していくなどの取り組みも、今後進めていきたいです。

(文責:棟朝)

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